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海老原 靖

海老原靖海老原靖
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profile

1976年茨城県生まれ。取手市在住。映画をモチーフとした作品の他にも髪の毛をモチーフにしたlustシリーズや、女優の着る華やかなドレスをモチーフにしたdressシリーズ等、数多くのシリーズの作品を発表。 http://ebiharayasushi.com/
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WHO 001
定価:700円

映画を作品のモチーフとして使うことがよくあります。映画のセットを実寸大で再現したり、映画に登場する家の油絵であったり。映し出された途端に消えてしまう映画は、人々の記憶からも時間とともに消えていってしまうもの。そういった消費され消えゆく映画の細部をモチーフに作品を作っています。人も消費される対象。ハリウッド映画のように、商業マーケットの中で消費物としてつくられている映画においては多くみられます。例えば、子役としては成功したけど、俳優としては成功しなかった子役たち。とくにかれらの場合は、そういったマーケットに身を置くことに対して本人の意思があったかどうかわからない上に、ただ消費されるだけでなく人間としても相当破綻をきたしてしまう人が多い。なかでも、90年代に爆発的人気を得たマコーレカルキンは、消費された子役の象徴的な存在で、私にとってはよだれもののモチーフなんです。立体、油絵、写真と様々な形で永遠の子役マコーレカルキンが、美術の場によみがえってきます。


W:カルキン?がいっぱいですね。これは、誰なのですか?

海老原:全員カルキンマスクをかぶって特殊メイクをした僕です。マスク自体は結構カルキンに似ていたんですが、かぶると似てなくなるんですよ。でも、まあ似てる似てないよりも複数カルキンがいるっていう所が重要なんです。

W:海老原さん本人だったのですね。カルキンになった気分はどんな感じでしたか?

海老原:ウキウキ気分でした。でも思ったよりもカルキンに似ていないのに若干ショックを受けました。鏡で自分の顔を見たんですけど、なんか生々しい感じでした。

W:タイトルのGhost Culkin のゴーストというのは、どういう意味なのですか?

海老原:それは、カルキンがスクリーンの中で幽霊のように存在し続けるという所からきてます。94年を最後にマコーレー・カルキンはスクリーンから消えたけど、その姿は年齢を変えず、この10年間スクリーンに映し出されているのです。それは、キアラン、クイン、クリスチャン、ローリーというカルキン兄弟達の出現なんですよね。

W:そんなにたくさんマコーレ−・カルキンには弟がいたのですね。

海老原:そうなんだよね。しかも、みなマコ−レーそっくりなんだよね。それで、マコーレがスクリーンから消えた後は、弟達がマコーレーの亡霊みたいにスクリーンを彷徨って、観客に「永遠の少年」という快楽をあたえ続けてきたんだ。 そして、おととしに一番下のローリーがスクリーンに登場したんですよね。

W:じゃあ、ローリーが成長してしまったら、カルキン顔はもう出てこないってことですね。

海老原:そうですね。カルキン兄弟の子供がいつかカルキン顔でスクリーンに登場するのかもしれませんが、とりあえず、ローリーが出たことによってカルキン顔は出尽くしたことになりますよね。それと共に8年ぶりにマコーレ自身も成長した姿でスクリーンに登場しましたよね。

W:海老原さんは、カルキン兄弟の一員になった感じなのですか?

海老原:一員というよりもカルキン兄弟全員を表現した感じかな。僕の中ではカルキン兄弟へのオマージュ的要素が強い作品ですね。

(WHO001より抜粋)



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staff

杉原洲志 Shuji Sugihara
1976年生神奈川生まれ。
WHO編集長/アートディレクター