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土屋 貴哉

土屋貴哉土屋貴哉
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profile

1974年東京生まれ。東京在住。90年代後期より、日常の事物への最小限の介入行為をもとにした作品を制作。それらは、映像・写真・平面・立体・インスタレーションなど、多メディアに渡り展開される。近年は新たな試みとしてPC上で展開するプログラム作品シリーズもスタート。 http://www.db-beam.com/taw_os/
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WHO 002
定価:700円

わたしたちは世界を自分たちのルールに従い、見たいようにいつも見ています。けれどもそれでは世界はいつも自分たちがが見たいような姿にしか見えてきません。いかにして世界の見え方を更新するか。私がおこなっていることとはその為の作業であり、目前に広がる世界に自分がどのように関わっているかを見直す作業ともいえます。その一連の作業の中で、わたしは特別な行為を必ずしも行う訳ではありませんが、たとえそれが些細な行為であってもスケールの大きな問題を扱うことはできると思うのです。目前に無数に溢れるものの間の関係にウルトラライトに介入すること。それはときに不毛に映るかもしれませんが、手荷物は軽いほうがより深くダイレクトにこの世界を眺められるようにわたしには思えるのです。


描かれた正三角形

土屋:三角形の内角の和は必ず180度になると教わったけど、例えば赤道上に線を引いて、そこから北極にそれぞれ結んで、地球上に巨大な三角形を書くと、すべての角度が90度になる所があって、内角の和が270度の三角形が書けるのです。これは平面上と曲面上の違いによる結果なんだけど、球体上に生きる僕たちにとって、平面と曲面の違いなんてどこにあるんでしょうね。盲目的に信じていたルールも見方が変わると、とたんに隙間ができるんです。

W:実際に地球上に書くとこんな正三角形は、書けないんですね。でも、もちろん地図の上だと書けるし、なんか、ちょっと不思議な感じですね。

土屋:ただ地図の上に三角形を書いただけなのに、その三角形がどこに属しているのか分からなくなって、宙に浮いてくる感じですよね。


転送

土屋:これは、書いた内容をすべて消してしまってできた消しゴムのカスと便箋ですね。

W:便箋には、何が書かれていたのですか?

土屋:ラブレターですね。手紙というものは、ただ自分の気持ちを紙の上に残しておくのでなく、読んでもらいたい相手の為に書くものですよね。特にラブレターは、一言一言が相手にどう思われるのか、相手の気持ちをくんだりしますよね。そういう点で書いたり消したりという行為が多いんだろうなと思いました。本来捨てられるモノの中に見えない何かが入りこんでいる。そのひとつの例です。


1/1スケール

土屋:スケールにはどちらにもなんの細工もしてなくて、単位の違うスケールが分母と分子のようにただ乗っかっているだけ。お互いをお互いが監視しているようにも見えます。

W:下のはかりの目盛りが変わることはあるのですか?

土屋:一度だけ変わる瞬間を目撃してビックリしました。その瞬間を記録した「パーフェクトジョブ (Perfect job)」という映像作品も、その後つくったんですよ。

W:この作品を作るきっかけとかはありますか?

土屋:近くのホームセンターで、ものさしと台ばかりを買ったんだけど、カートに入れる時に台ばかりの上にものさしを置いたんですよね。それを見てなんか不思議なことがここに起こっていると感じたのがきっかけかな。

(WHO002より抜粋)



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staff

杉原洲志 Shuji Sugihara
1976年生神奈川生まれ。
WHO編集長/アートディレクター