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004

原 高史

原高史原高史
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profile

1968年東京生まれドイツ・東京在住。多摩美術大学絵画科油画大学院修了後、2000年よりドイツに移住。2006年シンガポールビエンナーレ、2009年ハバナビエンナーレ等、様々な地域、展覧会でプロジェクトを展開。またペインティングの作品も多くの個展、グループ展で発表している。
http://www.takafumihara.jp/
ブックイメージ2 ブックイメージ2
ブックイメージ3
WHO 004
定価:1,200円
A5変形・68ページ
日英バイリンガル

原さんが、日本、ドイツ、シンガポール、ブラジルと様々な地域で、展開しているピンクウィンドウプロジェクト。それは、ある地域や建物をピックアップし、そこに住む人やその建物にまつわる人々と共に作り上げていくプロジェクト。人々との対話の中から原さんが拾い出した言葉が、添えられた絵と共に、建物の窓から発信される。日本では、新潟の過疎化が進む村から。多民族国家シンガポールでは、シンガポールの独立宣言に立ち会い、国の歴史を見守ってきた旧市庁舎から。ドイツでは、 第二次世界大戦中のユダヤ人強制収容所への移送を目撃した倒壊寸前の旧給水塔から。様々な人の思い、そして歴史的事実が、窓を通じてまるで絵本のように、やさしく語りかけてきます。


W:原さんにとって、自分の作品に他人の言葉を取り入れるということはどういうことなのですか?

原:言葉はみんなが持っている表現。経験したことを一から百まで説明する人もいれば、集約する人もいるし、遠回しに言う人もいるし、別の形で伝える人もいるし、何も出さない人もいる。すごく表現力が豊か。そういう意味では言葉はすごい絵画的だと思う。それでいて、流動的で消えちゃうものだから、とっておきたいという思いもあります。

W:絵画的というのはおもしろい発想ですね。

原:人と会う時や、インタビューの時もその人の絵を見ようと思っています。美術館で絵を見るのと全く同じ感覚。ああ好きな絵だなとか、嫌いな絵だなとか。

W:嫌だなと感じるのはどんな言葉ですか?

原:相性もあると思うけど、心の中とは絶対違う口先だけの話とか、今まで生きていて何も残ってないような全く味のしない話とか。

W:逆に、原さんにとって魅力を感じる言葉はどんな言葉ですか?

原:自分の心を少し埋めるような言葉です。根本的に、人の話を聞くことで何かを埋めようとしている。そこには色々な要素が絡むけど、基本的にはそこがなかったら、このプロジェクトはやってないですね。

W:具体的にはどんな言葉なのですか?

原:辛いことも自分の中で一回まとめて、柔らかくして、きれいに出された言葉ですね。例えば、戦争のことも、家族が殺されたことも、ただ辛かった、大変だったというだけじゃなくって、どこか、きれいな表現の言葉。それでいて、きれいだけじゃなくって、残酷であったり、色々な要素が含まれている言葉。

W:プロジェクトでもそういった言葉は入っていますか?

原:入ってますね。もしかしたら、言葉だけを見ても僕が感じたことすべては伝わらないかもしれない。でも100人中100人が分かるよう言葉を選ぶとすごく説明的でつまらなくなってしまう。僕が感じた、時代の感覚、雰囲気、感じがちょっとずつ出てくればいいなと思っている。

W:言葉にはそれぞれ原さんのイラストが添えられますが、それらはそういった原さんが感じたことを説明するようなイラストなのですか?

原:イラストもやっぱり説明的だとおもしろくない。童話のキャラクターのイメージですね。

W:やさしく語りかけられている感じがすごくするので、「童話的な絵」というのはすごくしっくりきますね。

原:イソップ物語でもそうだけど、童話として読まれているものって、オリジナルは結構どろどろしていて、それが時代と共に編集されて、簡略されて、何かに置き換えられたりして、柔らかくなって今の形になっている。だから、童話だ、楽しいなって読んでいても、そこにはメッセージ性があるから、不気味さであったり怖さであったり、何かあるなって感じる。その感覚はすごく好きで、そういう感覚は入れたいなって思う。

(WHO vol.4 から抜粋)



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staff

杉原洲志 Shuji Sugihara
1976年生神奈川生まれ。
WHO編集長/アートディレクター