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アトリエにお邪魔しました VOL.02

2015-5-13(Wed)

画家であり、イラストレータであり、デザイナーでもある

山口洋祐さんの住居兼アトリエにお邪魔しました。

駅から徒歩数分の所にあるビルの3階。

生活するスペース、絵を描くスペース、パソコンを使うスペースが

ゆるやかに重なっている感じだ。

床には制作中の仮面が置いてあったり、

壁には、友人が撮ったという写真や好きな詩やら

いろいろ貼られている。

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部屋の一角にある棚には、CDやら本やらビデオが並ぶ。

映像的というか、立体的で奥行きがあるという
アルゼンチン音楽のモノ・フォンタナのアルバム「Cribas」。

状況だけを描写していって、
その間にあるものを浮き彫りにしていく感じに、
ぐっとくるというレイモンド・カーヴァーの小説。

バリー・ユアグロの超短編集は
全部何かの過程みたいで、全然何も分からないけど、
想像だけはどんどんふくらんでいくという。

ビジュアルが絵画的で作り込まれていて
何度見ても発見があるというウェス・アンダーソンの映画。
特に「ロイヤル・テネンバウムズ」のニコの曲が流れて
マーゴがバスから降りてくるスローモーションのシーンが好きだと。

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ウェス・アンダーソン映画の要所要所に入る

スローモーションは、確かに印象的。

例えば何かが粉々になって飛び散っていくような、

見た事のない瞬間を見せてくれるようなスローモーションではなく、

ただバスからゆっくりと降りて来たり、誰かがただゆっくりと振り返ったり、

数人で一列になってゆっくりと歩いたりする。

プールの底に潜った時のように

一瞬にして情報量が半減したような感じだ。

ストーリー展開や台詞が失われた事でビジュアルの美しさは強調され、

ゆっくり変化していくその姿に、登場人物たちの心情が凝縮され増幅され、

動き出すその瞬間を見ているような気分になる。

そして、音楽との相性は抜群にいい。

山口さんの絵を見て感じるのは、
この、情報が半減する、気持ちよさだ。
描かれるものには、
絶妙に省略され、絶妙に歪められた形が持つ
凝縮感と浮遊感がある。

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現代美術作家であり、映画監督でもあるミランダ・ジュライの
短編集「いちばんここに似合う人」には

「モン・プレジール」という

倦怠期を迎えたあるカップルが
映画のエキストラをする話が収められている。

レストンでのシーン、
2人は主人公の隣のテーブルで
何の音も発する事無く口を動かしては

笑ってみたり、うなずいてみたり、眉間にしわをよせてみたりする。

相手の意図を行動から読み取り、
それに行動で返すというやりとりを生き生きと演じる。
そして、カットの声がかかって会話が許された途端に
2人はぎこちなく黙り込んでしまう。
まるで、カットとアクションの間だけ
出会った当初に戻ったかのようだ。

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こちらは、山口さんが好きな映画にあげた一本、
ヴェルナー・ヘルツォーク監督の「The Wild Blue Yonder」のワンシーン。
水の惑星に宇宙飛行士達が到着したというこのシーンには、
南極の水中で撮影された映像が使われているらしい。
海面に浮かぶ氷を通り抜けた太陽の光が
照らす海の中は、薄暗く幻想的だ。
何光年という、想像もできない程
遠くにある場所のように見える。

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こちらは、山口さんのメモ帳。
アーティストでありイラストレータである

フィリップ・ワイズベッカーのトークイベントに

数年前に行って以来描いているという。
人との会話や、読んでいる本や、ドキュメンタリー映像の中から、

宇宙やら素数やらジャムのことなど
印象に残ったものを言葉とイラストでメモしていると言う。

会話の一部、物語の一部、関係性の一部、

何かの一部が、所狭しと描かれたノートは、

プールの底からプハっと水面に上昇した時に見える光景のよう。

びっしりとつまった情報量が持つ心地よさがある。

山口さんの絵に漂う心地よい凝縮感と浮遊感は、
そうした積み重なった情報が省略されることで生まれているように思える。

近所のカフェに集まる人たちにも
水面下で活動する秘密結社の面々にも見えたり、

旅行先で目にした景色にも
別の惑星の景色にも
ずーっと先の未来の景色にも見えたり。

感覚的、意図的に省略され歪められたラインや形には、
断片化された事象や物語が漂い、
時代も場所も曖昧にしてしまうやわらかさがある。

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手狭になってきたので、

そろそろ引っ越しも考えているそうです。

新しい街で、新しい家で、描かれる絵も楽しみです。



アトリエにお邪魔しました VOL.01

2010-4-25(Sun)

6月に個展を控える海老原靖さんの
アトリエにお邪魔しました。

海老原さんにとって久しぶりの立体作品の制作中。

そんな海老原さんに、超強力助っ人が。
ドイツからつい最近帰国された
大学の先輩だった佐藤さん
立体作品を制作している美穂子さんの美術作家夫婦です。

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この日は、立体の回りを石膏で固めていきました。
すっかり覆われ、もはや別の物体に。

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この状態で数日乾かして、石膏をはがして型が完成するそうです。
そこから、完成した石膏の型にFRPを流しこんでいくそう。
完成はまだまだ先らしいです。

普段一人で制作している海老原さん。
複数での作業も、なかなか楽しかったとのこと。
アップテンポの洋楽から懐かしの歌謡曲まで
色々な曲をBGMにしゃべりながら、集中しながら、
着々と作業は進んで行きました。
今日作業が一段落するので、
みなでカラオケに行く予定らしいです。

徳永英明さんのVocalistも海老原さんにとって作業中のBGMのひとつ。
Vocalistと言えば、未来予想図供△覆瓦蠕磴箸い辰震抄覆
徳永さんがカバーするという
460万枚以上売れている大ヒットシリーズ。
珠玉のバラードをあの歌声で歌われると
そりゃあいいもんです。

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曲自体も、徳永さんのあの声も魅力的だけど、
ボクが感じる魅力は、女性の曲を男性が歌っているという所。

恋する女心。
揺れ動く女心。
失恋した女心。
昔の男を懐かしむ女心。
女の恋物語を男が歌う。

そこには、距離感が生まれる。
オリジナルの曲にはない、距離感。
ひとつ何か異物がはさまっている感じ。
もちろん異物って言っても嫌ものではなくって。
物語の進行を静かに見守るナレーターのよう。
そんな距離感が新鮮で魅力的なんです。

「油絵と違って粘土は、リアクションがすぐ返ってきておもしろい。
良くも悪くもすぐ変化していく」と話す海老原さん。

確かに、直に粘土を触って作り上げる立体は
距離感が近いように見える。
でも海老原さんの場合は、
絵具やブラシを自由自在に操り作り上げる油絵と
比べるとどうしても、作品との距離感は遠のいている。
そこには、異物が入っている。

作品と作家との距離は近ければいいもんではないらしい。
マチスは、長さ3mもある筆を使って絵を描いていたらしい。
パレットはどこに置けばいいの?なんて考えしまう。

作家と作品の間に異物が入り、できあがる形。
どこか、距離感が不思議な形。
海老原さんが作る立体の魅力はそんな距離感なのかもしれない。

新しい立体が発表される
6月の個展がとっても楽しみです。

その後も立体は精力的に作っていきたいそうです。
青年の肖像シリーズ「プリティーボーイズ」の
立体バージョンも構想中らしいです。

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ある意味セルフカバーともなるような、
こちらも楽しみです。



         

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editor profile

杉原洲志 Shuji Sugihara
1976年生神奈川生まれ。
WHO編集長/アートディレクター

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