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AROUND THE WORLD with the ARTISTS VOL.02 北京

2010-9-28(Tue)

作家と共に世界を巡る「AROUND THE WORLD with the ARTISTS」の
第二回目は、
WHO vol.01で特集した海老原さんと

グラフィックデザイナーの佐藤靖さんと一緒に中国は北京へ。

次々に新しいビルが建ち、急速に変化していく北京で
2つのアートエリアを探索してきました。

最初に行ったのは
北京の中心地から北東にタクシーで20分程の所にある
798芸術区と呼ばれる国営の電子部品工場の跡地を利用したアートエリア。

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工場跡地と言っても中にはまだ稼働している工場もあって、
煙突からは、白い煙がモクモクと出ていたり
時おりプッシューっと、どこからともなく水蒸気が舞い上がったり。
そんな中、中国だけでなく日本含め世界からの100以上のギャラリーが集結し
工場級の展示空間で作品を展示しています。

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今では、798は観光地としても有名で、
平日でも多くの観光客で賑わっていました。

そして次に行ったのが
798よりタクシーで10分ほど、更に郊外に行った所にある草場地。
以前は国に芸術地区として指定されたエリアで、
森美術館でも個展を行った
艾未未 (アイ・ウェイウェイ)によるレンガ造りのギャラリー等
こちらも巨大な展示スペースが並びます。

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そしてすぐ横には、中国の郊外の人々の生活が。

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恒例、気になる作品を一つ
選んでもらいました。

佐藤さんが選んだのはこの作品。
草場地のエッグギャラリーで見つけた
常須工(Chang Xu Gong)の刺繍の作品。

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「近寄ると見えてくるグラフィカルな模様とか、
派手な人物の無造作な入り方とか、
あと、笑顔の奥に見える悪意が気になる」とのこと。

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気さくなギャラリーオーナーが
見せてくれた彼の他の作品も同様に
ユーロやら、100ドル札といったお札に
派手な格好をした中国の農民だったり、会社社長風の人が
とてもハッピーな表情で、
すごく無造作に適当な場所に配置されている。
そこには、急速に大金を得た中国人に対する皮肉と共に、
彼らを皮肉的に見ている人に対する皮肉も感じる。

北京に来て感じたのは振り幅がすごく広いということ。
一杯1000円で売られているビールもあれば、
50円あればお腹一杯になれる場所もある。
ここ草場地でも
数百万円、数千万円の作品が売られているすぐ隣では、
十数円の野菜を売る人がいたり。

人のビジュアルの幅もすごく広い。
広大な国土の北から南から
多様な民族が集まる北京には、
小太りでおちゃめな顔つきな人から
スタイル抜群で
日本でもなかなか見られないような美男美女もいる。

そしてファションセンスの幅も広い。
高級ブランドを身につけている人から
パジャマ姿の人まで。

地下鉄で見かけた
スタイル抜群、モデル級の容姿を持つイケメンが
真ん中に大きな犬のアップリケが付いた
トレーナーを着ていることに愕然としたこともある。

それはもう、とんでもない幅の広さなのです。
そして、そんな素敵な彼の笑顔を見ていると
いかに日本での暮らしが
極端なものが少なく、幅の狭いものなのかということを
ひしひしと感じます。

僕が選んだのは、
こちらも草場地で見つけた
自画像をモチーフにした張大力の作品。
伝統的な建築物が取り壊され
ブサイクな近代的なビルが立ち並ぶことに対する
抗議と皮肉がこめられ、
北京市内の取り壊しを待つ古い壁に
落書きのように描かれています。

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北京のタクシーに乗ると
運ちゃんがおもむろに窓をあけて
カァ〜ペッとタンを吐く姿をよく見る。
ただ、数年間に来た時と比べると
その姿は少し減ったようにも思える。
そういえば、地下鉄のホームで、
カァ〜とやってそのまま
走ってどこかに行く人を見かけた。
あれはどこか適切な場所でペッとやっていたんだろう。
日本の喫煙スペースじゃないけど、
北京では堂々とタンを吐ける
場所がどんどん少なくなっているのかもしれない。

一度出したタンをまた飲みこむのは気持ちが悪い。
外に吐き出されなかったタンは
もんもんと体の中に留まるしかありません。
タンをひっかけられる心配もなくなり
道もきれいでいいんだけど、
少し心配です。

急速な経済成長を遂げる中国。
それとともに国民の格差はますます広がり
新たな問題を抱えているもの事実。
そして、今後も多くの作家がそういった問題に取り組み、
変化に対して肯定し、否定し、
様々な作品を生んでいくんだろうなと思いました。

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草場地を出た後は、北京中心に戻り
北京ダックで乾杯かと思いきや
すでに本日のダックは終了。
入店した時には、
すでに料理人達が終了モードになっているのを見て
悪い予感はしてました。
次回はちょっと早めに行くとします。

そして海老原さんは
今回は特に気になった作品はなかったとのこと。
まぁこういう時もありますね。



AROUND THE WORLD with the ARTISTS VOL.01 彫刻の森美術館

2009-12-5(Sat)

作家と共に世界を巡る「AROUND THE WORLD with the ARTISTS」の第一回目は、
WHO vol.01-03で特集させて頂いた海老原さん、土屋さん、小瀬村さんと
一緒に神奈川県にある箱根彫刻の森美術館へ。
空や山を背景に100点以上の彫刻作品を堪能してきました。

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オーギュスト・ロダンの「バルザック」。
海老原さんの一口メモによると、ガウンをとると実は男性器が勃起していて、
ガウンをとったバージョンの彫刻も存在しているらしい。

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後藤良二さんの「交叉する空間構造」。
人間のどろどろした人間関係と、人間が持つ整列にならんだ分子構造。
相反するものをひとつの形にまとめた作品。

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バリー・フラナガンの「ボクシングをする二匹のうさぎ」。
十字架の上でうさぎがボクシングをしている、
この組み合わせ、かなり色々想像が膨らみます。

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新宮晋さんの「終わりのない対話」。
目に見えない、風を目に見える形や動きとして表現している作品。

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ピーター・ピアーズの「しゃぼん玉のお城」。
堀内紀子さんの「未知のポケット」。

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残念ながら年齢制限があるので、小学生以上は遊べません。
でも、子ども達が楽しそうに遊ぶ姿を見ているだけでも楽しい。

作家のみなさんにそれぞれ、気になった作品を聞いてみました。

海老原さんは、この作品。
「気になったのは、たぶん少女であろう人物がモデルの彫刻。
短髪で、胸もとても男性的だからはっきりと性別が分からない。
このモデルは胸がなかったのか、それとも作者が意図的に胸を削ったのか。
もっとボリュームのある人を選んで肉感を表現している彫刻が多い中、
こういうスマートな彫刻はあまり見た事がない。上半身と下半身が別物なような感じがする。」

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土屋さんは、この作品。
「角材をただ連結させただけという、最小限に手を加わえた作品は、あの中で異質に見えた。
そして野外の中で、植物とともに展示されているところが
よりあの彫刻を美しく見せていると感じた。」

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小瀬村さんは、イゴール・ミトライの「眠れる頭像」。
「横になって顔に、ぐるぐる巻きの布。
口だけが出ていて、怪我をしているようにも見える。
かなり顔にフィットして目の形がおぼろに見えるところから、薄い布をイメージできる。
彫刻だけど、布の薄さや透明感といった質感がある。
そういった質感が感じられるのは、彫刻では珍しいと思った。」

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ちなみに、僕が気になったのは、
カール・ミレスの「人とペガサス」。
ギリシャ神話の英雄ベレロフォンがペガサスと共に、
怪物キマイラを退治に向かう場面を彫刻にした作品。
人とペガサスの距離間がなんともいえない。

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そして、気になった言葉。
(ヘンリー・ムーア企画展室にて。)

「最初に手のひらサイズの小さいな模型を作る。
そこで、どの角度から見ても興味深いものをつくる。」

よく知らない人が作った、なんだかよく分からない形が、
作り手の意図や興味や美的センスが凝縮された形なんだという、
当たり前のことに改めて気付きました。

そもそも、WHOは海老原さん、土屋さん、小瀬村さんの言葉を通じて、
制作過程や、作家自身のことを知ることで、
より彼らの作品を楽しむことができたという実感から生まれたもの。
そんなWHOの原点を改めて感じることができた
第一回目のAROUND THE  WORLD with the ARTISTSでした。

それでは次回もお楽しみに。



         

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editor profile

杉原洲志 Shuji Sugihara
1976年生神奈川生まれ。
WHO編集長/アートディレクター

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