MOVIES:橋口亮輔02
2011-8-16(Tue)
橋口亮輔監督の映画の魅力の一つ、
嫌な感じの人たちの続き。
「ぐるりのこと」に出てくる
木村多江演じる翔子の職場の後輩男子は、
翔子との仕事上の言い争いで、
全く同じことを全く同じ調子でくり返す。
翔子はどうにか理解してもらおうと説明し続けるのだけれども、
何も変わらないし、変わろうという気がはなからない。
全く同じことを全く同じ調子でくり返す。
自分もたまに口喧嘩で、この手を使うことがあるが、
はたから見るとこんなにも嫌な感じだとは知らなかった。
何人かの感じの悪い人たちを挙げてきたけど、
やはりダントツ嫌な感じなのは、
「ハッシュ」に出てくる勝裕の義理の姉。
秋野暢子の筋肉質で硬い表情から
「一杯だけや」と言って小さなグラスに注がれたビールを一気に飲み干す姿から、
勝裕から受け取ったタオルケットをたたみ直す姿から
すべての佇まいに、
抑圧された生活によって蓄積された静かな怒りのようなものがにじみ出ている。
そりゃあ、好き勝手に東京で暮らしているように見える義理の弟達の
結婚せずに、ただ子どもを作りたいという話に対して、
「あかん、わからへん。」と言うのも分かる。
それはそうだろう。
絶対分かりあえることはできないと思う。
分かり合えるとしたも、何年後かにできるかどうか。
橋口亮輔監督の映画には、
自分ではどうすることもできないことが多々起こる。
絶対に分かりあえない人たちとの衝突。
大切な人の死。
絶対に成就することのない恋。
主人公達は、答えがなかなか見つからない、
不安定で不確実で曖昧な状態に陥る。
そして、そこから、ゆっくりと自分達なりの答えを出して行く。
そのプロセスが本当に丁寧に描かれている。
だからこそ、終盤で見せる彼らの
すがすがしい表情は見ているだけで心を動かされる。
橋口亮輔監督の映画の中で
一番好きなシーンはハッシュの冒頭のシーン。
会ったその日に一夜と共にした勝裕と直也が
次の日の朝「あれ…」「どした?」「くつしたが…」なんて会話を
部屋越しにしながら直也がコーヒーを作っている。
すすがれたお湯は、フィルターを一杯にし、そしてコーヒーがあふれ出す。
不安定で不確実で曖昧だが、
可能性あふれる世界へとスタートを切ったような
期待感いっぱいのシーン。
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