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「日常/ワケあり」

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2011-11-30(Wed)

日常/ワケあり
神奈川県民ホールギャラリー

2011.10.18-11.19

http://www.nichijo-wakeari.info/ja/

ニューヨークを拠点に活動している3名の
若手日本人作家による展示「日常/ワケあり」を見に行った。

最初のスペースに展示されていたのは、江口悟さん。

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紙で作られた、柱、つくえ、コップ、時計等々、
様々なモノが点在している。

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機能性、質感、質量感、
そういった情報は根こそぎ削除されている。
そしてその代わりに、不思議な歪みがプラスされている。

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井上ひさしがあるエッセーで、
「パロディが成り立つためには、“正確に”、“歪んでいる”、
という二つの正反対の考え方を
同時に内包していなくてはならない」と書いていた。

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まさにこの二つの正反対の考えが内包された
魅力的に歪んだ世界が広がっていた。

続いて、田口一枝さんのスペース。

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光を反射するという、すごく自然な原理から、
非日常的な空間を作りだしている。
この激しい状態をつくり出し、キープさせている
柱のような、植物のようなものの
機能的な形状も美しい。

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そういえば、その後に行った横浜トリエンナーレで見た
マッシモ・バルトリーニのパイプオルガンの
存在しても、しなくても、
美しい音色には何の影響も出ないという、
オルガンの機能とは全く別の次元で
存在している鉄パイプでできた巨大な装置もすごく魅力的だった。

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そして、一番奥で展示しているのが、播磨みどりさん。

白い紙でできた平面的な家がダイナミックに
展示空間をまっ二つに分断して、外側と内側を作っている。

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家に入って行くとそこはまた外。

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本やインターネットから集めたイメージをつなぎ合わせ
形作られたオブジェ。

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家という一番プライベートな空間の、
更に、奥にある寝室や作業部屋に置かれるパソコン。
僕たちは、家族や友達にも言えないことも、
このパソコンに対してなら、何のためらいもなく、
検索スペースに書き入れてしまう。
そして、そこから、いきなり外部へと繋がっていく。

内部に存在する外部から集め、つなぎあわされた子鹿は、
一体何者なのか。

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以前ニューヨークに行った時に彼女のアトリエに行ったことがある。
僕は作品が生み出されるアトリエという場所に興味がある。
作家が、興味があるもの、ちょっとひっかかったもの
制作途中のもの、ボツになったもの、試行錯誤しているもの
人に見せるということを前提していない様々なものが乱雑に存在している。
作家の内側が、外に少しにじみ出ているようで、
脳の中を覗いているような気になる。

アトリエが持つ、内側と外側の境が曖昧な空気感と同様に
彼女の作品には、
内側にある何かが外側に出てきてしまったような、
違和感と魅力がある。


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杉原洲志 Shuji Sugihara
1976年生神奈川生まれ。
WHO編集長/アートディレクター

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